母を思う一杯のラーメン。

私は幼少の頃に気管支ぜんそくを患っていた。
風邪をひいたり、少し激しい運動をするたびに
翌日には呼吸がし辛くなり、そのたびに母を悩ませていた。

小学校5年のある日、一念発起した母は、
私を病院へ連れて行こうと突然、教室まで予告なく迎えに来た。
私が嫌がるのを見越しての作戦だったようだ。

その後、大学病院で検査をして埃のアレルギーによる
気管支ぜんそくだということがわかった。
そしてその病気を治すために1週間に2度の抗アレルギー
注射を打ってくれる近くの診療所を探さなくてはならなかった。

母は手当たり次第に近くの診療所へ電話をかけまくり、
やっとのことでひとつの診療所を見つけた。

それから母は私の病気を治すため週2回
その診療所に私を連れて行ってくれた。
診療所の横に「大丸」というラーメン屋があった、
何時しか治療のあとにそのラーメンを食べて帰ることが
母と私の楽しみになった。

そのラーメン屋は当時から人気があり、お汁は醤油ベースで
昔ながらの中華そばというものだった。
大盛りラーメンを時間内に食べた人の名前を
店内の壁に所狭しと掲げてあるのも印象的だった。

先日、そんなラーメンを思い出し36年ぶりに食べに行った。
味も見た目も母と食べたラーメンそのままだった。
年老いているので大将も女将さんも変わっていないのがわかった。
そのラーメンを見て、食べてその当時の記憶が
どんどん蘇ってくる感覚を覚えた。美味しかった。

私の病気はすっかり完治した。
母のお陰だと思っている。

今日は母の命日。「ありがとう。」

一杯のラーメンが母との記憶を呼び覚ましてくれた。